郢客陽春を唱う(えいかくようしゅんをとなう )

郢客陽春を唱う

【読み】えいかく ようしゅん を となう

【意味】卑俗な音曲に馴れている郢の人の間で高尚な(宋の)陽春の曲を歌うこと。

【背景】楚王が宋玉に問うた。「先生はわが都で評価が高くないが、どうしたことか?」

それに対して宋玉は「低俗な曲に馴れている人々が、陽春白雪のような高尚な曲を聴いても理解できない。

鳳凰が飛ぶ眺めを小鳥は知ることもない。

それと同じで、世俗の人々に、どうして私の様な(高尚な)者を理解できるでしょうか」

と答えた。

<俗な解釈>「私の様な高尚な人間を、貴方の国の低俗な人々に理解できるはずがないでしょう」

と、宋玉は楚王に皮肉を言ったのである。

【真意】高雅な者が卑俗の間に受け容れられない(理解されない)たとえ。

【語彙説明】

〇楚王(そおう)・・・このときは襄王じょうおう。姓は芈(み)、名は横(おう)。戦国時代の楚の第22代君主。前298年から前263年まで、約36年間在位した。

〇宋玉(そうぎょく)・・・戦国末期(紀元前3世紀頃)の楚の文人。屈原の弟子とも後輩ともいわれる。襄王の父王から仕えている側近。

〇郢(えい)・・・中国、春秋時代の楚の都。
享楽的な都であったと言われており、「俗・みだら」の意に使われることがある。
熟語の例:「郢曲」(えいきょく)・・・①催馬楽・風俗歌・今様など中世・中古の歌謡・流行歌の総称。②低俗な音楽。俗曲。

〇陽春・・・「陽春白雪」の略。昔、中国の楚で最も高尚とされた歌曲。

【原文】郢客唱陽春

【出典】宋玉-対楚王問

各辞典表記の「郢客唱陽春」PDF

薤上之露(かいじょうのつゆ)とは

薤上之露/薤上の露

【読み】かいじょう‐の‐つゆ

【意味】薤 (にら) の葉の上に置く露

【真意】《にら の葉の上に置く露は消えやすいところから》
人の世のはかないことや、人の死を悲しむ涙をいう語。

また、漢の田横の門人が師の死を悲しんだ歌の中にこの語があったことから、
葬送のときにうたう挽歌ばんか の意にも用いる。

【漢詩】
〔原文〕薤露歌  漢・無名氏

薤上露、何易晞
露晞明朝更復落
人死一去何時歸

〔書き下し文〕薤露かいろの歌  無名氏(田横の門人)

薤上の露、何ぞかわやすき。
かわけば明朝さらた落つ、
人死して、ひとたび去ればいづれの時にかかえらん。

黔突(けんとつ)とは

黔突

【読み】けん‐とつ

【意味】すすけて黒くなった煙突。

【故事諺1】孔子に黔突なし

【読み】こうしに けんとつ なし

【意味】孔子の家の煙突は煙で黒くなることがない。

【真意】孔子は世を救うために東奔西走して家に落ち着くことがなかった。

【故事諺2】孔席暖まらず墨突黔まず

【読み】こうせき あたたまらず ぼくとつ くろまず

【意味】孔子の座席は暖まる暇がなく、墨子の家の煙突は煙で黒くなることがない。

【真意】孔子と墨子は世を救うために東奔西走して家におちつくことがなかったということ。〔班固‐答賓戯〕

縦書きで見る『大漢和辞典』表記の「黔突」PDF