「パチンコで有り金をスってしまった」「競馬で大金をスった」「信用取引で財産をスる」
の様に、ギャンブルなどで一瞬のうちにお金を使い果たしてしまう。
お金を溝(どぶ)に捨てる様な行為。
「紛失」と違い本人の恥じらいが滲む。
そんな意味の「する」とは、どんな漢字を用いるのか?
「する」には同訓異字の漢字が、
「擦る」「摩る」「磨る」「摺る」「擂る」「掏る」「刷る」「搨る」
など幾つか有る。
そのうち、前述の意味の候補は、「擦る」「摩る」「磨る」「摺る」「擂る」の6つである。
詳しく調べて当然の1つに限定してやろうと意気込んだが、最終的には多数決せざるを得なかった。
調べた結果を先に言うと、
【結論】
「賭け事などによって持っているお金をすべてなくす」意味の「する」の漢字は、
「擦る」が最も妥当だと思う。
次点は「摩る」だろう。
【決定理由】
理由は、3つ。
1つ目は、大野晋氏が『類語新辞典』で選んでいたこと。
2つ目は、『日本国語大辞典 第二版』に文例が記載されていたこと。
「財産を擦ったってかまやしない」(『家族会議』横光利一)
3つ目は、『漢検 漢字辞典』(発行:漢検協会)で採用されていたこと。
【辞典に書かれていた意味】
すりへらしてなくしてしまう。費やす。使いはたす。
賭け事などによって、持っているお金をすべてなくす。
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ウエブ上で調べると、「擦る」「摩る」「磨る」が候補で、多数決なら「擦る」が優勢だ。
『コトバンク』は、「擦る」「摩る」。(『大辞林』第三版の解説より)
『漢字ぺデイア』は、「擦る」。(漢検協会の提供)
『デジタル大辞泉(小学館)』は、「擦る」「摩る」「磨る」。
『漢字辞典』は、「擦る」。
『広辞苑無料検索』は、「摩る」。<明鏡国語辞典3266では「擦る」とも併記>
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図書館で調べると、「擦る」「摩る」「磨る」「摺る」が候補である。
1.『日本国語大辞典 第二版』(小学館)の文例に「擦る」「摺る」の2つがあった。
「財産を擦ったってかまやしない」(『家族会議』横光利一)
「首尾よく借りた三両を、十両に仕ようと思ふ壺がからりと外れ、元手までも摺って仕まった素寒貧」
(『人情本・恩愛二葉草』畠山人)
2.『類語新辞典』(角川書店 著:大野晋)で「擦る」のみ選んでいたが、
後の『類語国語辞典』で「擦る」を主とし「摩る」も併記している。
3.『類語大辞典』(講談社)では、「擦る」を主とし〔「摩る」とも書く〕と併記している。
4.『新明解国語辞典』(三省堂)では、「擦る」とし〔「摺る」「磨る」とも書く〕と併記している。
5.『古典基礎語辞典』(角川学芸出版 編者:大野晋)では、「擦る」の解説項目で次の様に記載されている。
〔⑥すり減らして使い尽くす。「比喩xxx(擦り切った人、または、擦り切り)。
貧乏で、すでに使うべきものを何も持ってない人」<日葡>〕
6.『漢検 漢字辞典』(発行:日本漢字能力検定協会)では、「擦る」を採用している。
7.ちなみに『広辞苑 第三版』(岩波書店)では、「摩る」「擦る」「磨る」「擂る」の欄で、特に限定していない。
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