捺印(なついん)押捺(おうなつ)押印(おういん)

捺印

【読み】なつ-いん
【意味】

押印おういん」と「捺印なついん」と「押捺おうなつ」は、いずれも判子はんこを押すことだが意味が異なる。
「捺印」は、当用漢字の制定により、「捺」が当用漢字外となった為、「押印」に代用された。よって、「捺印」が由緒ある正統な熟語である(笑)。

ちなみに、漢字の「判子」は当て字。「判子」の正式名称は「印章」ですが、ここでは「判子」で説明します。

「捺印」は、判子を押すことのほか、押した印影についてもいう。
「押捺」は、判子を押すことのほか、指紋しもんを押すこともいう。
一般的に指紋を押すことは少ない為、押捺はほとんど使われない。

ここで言う判子は、苗字だけの同一規格大量生産(例「シャチハタ」)のようなものではなく、木彫りなどで、印影が異なるものを指す。

後者(木彫りなどで印影が異なる)の判子を役所で登録すると実印となる。
実印は、苗字だけでなく名前も彫られた判子を用いることが一般的である。
通常「印鑑」は実印のことである。

署名捺印しょめいなついん」と「記名押印きめいおういん」という組み合わせで用いられる。
一般的、署名(本人が自筆じひつで氏名を書いたもの)に印を押す際は「捺印」と使われる。
本人の自筆ではなく、記名(代筆やゴム印などで氏名を記したもの)に印を押す際は「押印」と使われることが多い。

ちなみに、署名の方が記名より証拠能力が上で、実印を押す場合は、印鑑証明書を添付するのが常識である。

【印鑑の雑学】

〇「印鑑」と「判子」は、一般的には混同して使われるが、次の違いがある。
1.印鑑(いんかん)・・・役所や銀行の台帳に残る朱肉の跡(印影)を指す。具体的には、実印や銀行印のこと。実印の寸法は自治体によって規定されている。一辺が8~25mmの正方形に印影が収まる印鑑とされることが多い。
2.判子(はんこ)(正式名称は「印章」)・・・手に持って押す道具そのものをを指す。実印や銀行印から日常で使う認印もすべて「判子」。前述の通り「判子」と書くのは当て字。

〇実印とは、自治体(市区町村役場)で印鑑登録をした印鑑のことで、個人の場合は苗字だけでなく姓名で作成することが一般的。
法人の場合は、「〇〇株式会社代表取締役之印」などとと記し、重要契約などに使用される代表取締役などの印鑑です。
強い法的効力を持ち、印鑑証明書とセットで求められることが多く、不動産の売買や相続など、重要な契約書に欠かせないものです。

〇銀行印は、取引銀行に登録した判子で、一般的に実印と分けて使う。

〇認印は、苗字だけではあるが、一つ一つ微妙に印影が異なるので、実印に劣るが同一規格大量生産(例「シャチハタ」)などの大量生産されたシャチハタなどに比べて証拠能力がある。

〇実印や銀行印は偽造・悪用のリスクを減らすために複雑な書体が選ばれる。一方で、認印は判読し易いように読みやすい書体が選ばれる。

〇判子は、「はん」「いん」「」と呼ばれることもあります。
」は飛鳥時代(701年)に制定された大宝律令で、官印(官庁が職務で使う判子)の一つとして天皇御璽てんのうぎょじが作られたことが始まりです。
現在では天皇のお使いになられる判子だけが「御璽ぎょじ」と呼ばれ、国の判子は「国璽こくじ」と呼ばれる。
「御璽」は天皇の国事行為にともなって作られる文書に押され、「国璽」は外交文書など国家の重要文書に押される。

【語源】

〇印鑑の語源は、 「印鑑」という言葉は、判子が本物か偽物かを判断するために、印影いんえいの照合に使っていた台帳を「かがみ」と呼んでいたことに由来します。
台帳(鑑)には、本物の判子で押した印影が載っており、印影を見比べる道具として使用されていました。そして、いつしか台帳は「印鑑」と呼ばれるようになり、本物の判子で押された印影のことも「印鑑」と呼ぶようになったとされています。
印鑑を照合して判子の真偽を確かめる方法は、今でも銀行などで使われている仕組みです。

〇判子の語源は諸説あります。(前述の通り漢字で「判子」と書くのは当て字)

1.江戸時代によく作られた版画に使う板のことを「版行・板行(はんこう)」と呼び、それが転じて「ハンコ」と呼ばれるようになった。
2.版行(はんこう)を使って書物を印刷することと、印章で捺印することが混同されたので、印章のことも「ハンコ」と呼ぶようになった。
3.「判を押すことを行う」ということばの「判行」が転じて「ハンコ」と呼ばれるようになった。

このように諸説ありますが、真相は不明です。