四矢反セズ(ししはんセズ)

四矢反セズ

【読み】ししはんせず

【意味】『詩経』斉風「猗嗟」の句に基づく表現で、反は矢が反復して同じ場所に当たること。

【文例】

「先生射ヲ善クシ、四矢反セズトイヘドモイマダカツテまとヲ出デズ。」

〔意訳〕「先生は(矢を)射るのが上手く、四本の矢が同じ所に当たる程ではないが、(直径約36㎝の)的を外すことはない。」

『下谷叢話』 永井荷風・著 岩波文庫 2000年9月14日発行 15頁 14行目

意味は文庫本の「注」語彙説明(260頁)を引用。解説者は成瀬哲生なるせてつお教授(山科大学)。

註:図書館で数種の辞書字典に当ったが見つからなかったので、文庫本の解説を引用させて頂いた。

【出典】

『詩経』斉風「猗嗟いさ」より一部抜粋(『新釈漢文大系』を参照)

〔原文〕

四矢反兮 以禦亂兮

〔読み下し文〕

四矢反ししかへる もつらんふせ

〔現代口語文〕

四矢はみごとに重なる。国の乱れを禦ぐに足る頼もしい人よ。

〔意味〕

「四矢」は、射儀に用いる四本の矢の意(毛伝・集伝)。

「反」は、四本の矢が皆同じところにかへるの意、つまり四矢が重なり合って的中することをいう。

毛伝鄭箋の「反は復るなり。礼射は三たびして止む。射る毎に四矢、皆其の故処を得。此を之れ復と謂ふ。射は必ず四矢とは、其の能く四方の乱を禦ぐに象る」、屈万里の「反は復なり。四矢皆重複して一処より出づるを謂ふ」による。

林義光は的にたった矢をばっして、また射る、これを四回くり返しても四矢がすべて同じところにたるとする。

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縦書きのPDFで読むなら → 詩経「斉風」猗嗟

飽暖/飽煖(ほうだん)とは

飽暖/飽煖

【読み】ほうだん

【意味】「飽食暖衣/飽食煖衣」(ほうしょくだんい)の略。

不自由のない生活のたとえ。または、贅沢な生活のたとえ。
飽きるくらいの十分な食料と暖かい衣服があって、生活に困らないという意味から。

【出典】『孟子』「滕文公・上」

『日本国語大辞典』の表記の「飽暖・飽煖」PDF

 

【類義語】

暖衣飽食/煖衣飽食(だんい-ほうしょく)

錦衣玉食(きんい-ぎょくしょく)

侈衣美食(しい-びしょく)

豊衣足食(ほうい-そくしょく)

 

丹前風呂(たんぜんぶろ)とは

丹前風呂

【読み】たんぜん-ぶろ

【意味】江戸時代初期、丞応じょうおう明暦めいれき(1652~58)の頃、湯女風呂ゆなぶろが流行し、江戸・神田四軒町雉子ちご町の、堀丹後守ほりたんごのかみの下屋敷の前にある風呂屋を「丹前風呂」と呼んだ。

丹前勝山

【読み】たんぜん‐かつやま

【意味】江戸で有名な遊女。正保しょうほう三年(1646)~明暦めいれき二年(1656)在籍と伝える。勝山と名乗る他の遊女と区別するため丹前勝山という。丹前とは堀丹後守ほりたんごのかみの屋敷前にあったので丹前風呂と呼ばれた風呂屋の湯女ゆなとしての前歴による命名である。

湯女の時から人気が高く、吉原に移籍して太夫たゆうの第一人者となった。裏付きのはかまに木刀を差した外出姿の歩き方は丹前風と言われて流行し、白元結しろもつとい片髷かたまげ伊達だて結びは勝山髷とよばれて後世に名を残した。

丹前風

【読み】たんぜん‐ふう

【意味】江戸初期の道楽者や俠客きょうかくの間で流行した伊達姿だてすがたなどの風俗。

江戸初期、神田の堀丹後守ほりたんごのかみの屋敷前の湯女風呂ゆなぶろを、丹前風呂と呼び、ここの湯女・丹前勝山たんぜんかつやまを目当てに出入りする旗本奴たちが、髪型、広袖ひろそでの着物、履物はきもの、刀の差し方、歩き方などを真似し、風流を争った。それが一種独特の伊達姿となり、流行った。これを丹前風と呼ぶ。

歌舞伎かぶき舞踊ぶようにおける「丹前」とは、この風俗を様式化、舞踊化したものである。

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湯女

【読み】ゆな

【意味】

1.温泉宿にいて入浴客の世話や接待をする女。有馬(現・兵庫県神戸市)にいたものが有名。

*日葡辞書(1603‐04)「Yuna(ユナ)<訳>入浴の世話をする女」

*太閤記(1625)一六・秀吉公有馬御湯治之事「有馬中へ鳥目二百貫、湯女共に五十貫被下」

*浮世草子・好色一代男(1682)三・六「此徒(いたづら)、津の国有馬の湯女(ユナ)に替る所なし」

2.江戸・大坂などの風呂屋にいた一種の私娼。

*慶長見聞集(1614)四「ゆなぶろ繁昌の事<略>湯女と云て、なまめける女ども廿人、三拾人ならび居てあかをかき髪をそぐ」

*浮世草子・好色訓蒙図彙(1686)上・人倫「湯娜(ユナ)風呂屋物 猿」

*人情本・祝井風呂時雨傘(1838)三・序「風呂とは呼べど洗湯ならで、湯女(ユナ)の名残も上方のみ」

[語源説]

浴室を預り管理する役僧をユイナ(湯維那)といい、更に略してユナ(湯那)とよんだところから〔風呂と湯の話〕。

 

丹前

【読み】たんぜん

【意味】家庭でくつろぐとき、防寒用として衣服の上に重ね着する綿入れの男子の家庭着。

普通、浴衣の上に重ねて一つ前にあわせて着衣し、細帯を締める。

江戸時代初期、湯女風呂ゆなぶろが流行し、江戸、堀丹後守ほりたんごのかみ邸前にある風呂屋を丹前風呂と呼び、それに通う男伊達おとこだての異様な風を丹前風といい、これが上方かみがたへ移って丹前とよばれ、防寒着の一種となった。

おかしなことに、語源元の関東では、褞袍(どてら)と呼ぶ。

丹前01

 

蜂蠆(ほうたい)とは

蜂蠆

【読み】ほう‐たい

【意味】蜂とサソリ。小さくても恐ろしいもののたとえ。

【文例】

「猛虎の猶予するは蜂蠆の螫を致すに如かず」<史記」淮陰侯伝>

《読み》もうこのゆうよするは、ほうたいのせきをいたすにしかず

《意味》猛虎はどんなに強くても、ためらっていては、蜂やサソリがちくりと刺すのにも及ばない。

《真意》力ある者でも決断力がなく実行しなければ、無力でなんの役にも立たない。

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【語彙説明】

〇螫(せき)・・・さす。毒虫がさす。毒をさされて赤くはれる。また、虫の毒。

芸帙(うんちつ)とは

芸帙

【読み】うんちつ
【意味】虫を防ぐために芸草(うんそう)を入れた書帙(しょちつ)。
転じて、書物、書巻のこと。

書帙(しょちつ)とは、和本を包み保護する布張りの覆い。

 

【「芸」について】

国語審議会の改変で「芸」は、元々の「芸」と「藝」の二つの意味を持つようになった。

1.「藝」の略字としての「芸」。(新字体とされた)

現在では、主にこの意味だけで使われる。

【音読】ゲイ
【訓読】う(える)、わざ

2.本来の「芸」。

元々はこの意味だけだった。

【音読】ウン
【訓読】くさぎ(る)

【意味】草の名前、ヘンルーダ。ミカン科の多年草。強いにおいがあり、書物の虫食いを防ぐために用いられる。

幺麼(ようま)とは

幺麼

【読み】よう‐ま

【意味】小さいことやもの。微小なもの。転じて、とるに足りないもの。つまらないもの。

【音読み】よう
【訓読み】おさな(い)、ちい(さい)
【意味】ちいさい。ほそい。おさない。いとけない。あどけない。=幼

【音読み】ば、は、ま、も
【意味】1.かすか。小さい。細かい。
2.か。や。疑問をあらわす助字。
3.接尾語。疑問詞などの後につけて語調を整える。
【熟語】麼虫(はむし)、恁麼(いんも)

 

恁麼

【読み】いん‐も
【意味】
1.(多く「の」を伴って連体詞的に用いて)疑問を表す。どのよう。いかよう。
<文例>「天地と我と恁麼の交渉かある」<漱石・吾輩は猫である>

2.(「に」を伴い副詞的に用いて)指示を表す。このよう。かくのごとく。
<文例>「動著は恁麼にあらざるなり」<正法眼蔵・仏性>
〔補説〕もと中国宋時代の俗語。禅宗とともに伝わり、禅僧の間で用いられた。

《日本大百科全書の解説》

「このような(に)」「そのような(に)」という意味の中国の俗語。いま話題にしている、あるいは顕現している事物の状態をさしていう近称の指示語。同義語に、異没(いも)、伊麼(いも)、与麼(よも)などがある。
また、禅宗では、言語によっては表しえない真実が、そのように顕現していることを示す場合にも用いられる。甚麼(じんも)、什麼(じゅうも)は「なんの」「どんな」などの意の疑問詞で、恁麼とは異なる。

泛駕(ほうが)とは

泛駕

【読み】ほう‐が

【意味】馬が興奮して指示に従わずに道をそれてしまうこと。

【四字熟語】「泛駕之馬」(ほうがのうま)

〔真意〕一般的な常識には従わずに別の方法をとる英雄のたとえ。

【出典】『漢書』「武帝記」

僂指(るし/ろうし)とは

僂指

【読み】る-し/ろう-し

【意味】

指を折って数えること。屈指

速やかに指折り数えること。また、速やかに指し示すこと。

【文例】畢には配偶の欠けたものまで僂指された(『土』長塚節)

【読み】しまい‐には‐はいぐう‐の‐か‐けたものまで‐るし‐された

乂安/艾安(がいあん)とは

乂安/艾安

【読み】がい‐あん/かい‐あん

【意味】世の中がよく治まって、安らかな・こと(さま)

【文例】

「君の領する所の帝国乂安なる能はず」<明六雑誌>

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乂る  【訓読み】か‐る
乂める 【訓読み】おさ‐める
乂   【音読み】がい

【意味】

1.かる。草をかる。刈
2.おさめる。おさまる。「乂安」「乂寧」
3.すぐれる。かしこい人。「俊乂」

〔漢検対象級 1級〕