晃峰

【読み】こうほう

【意味】晃は、日光の合字。よって、日光の山々の峰、または、日光山の峰のこと。

【例文】雀宮ヲ過ルヤ晃峰ヲ乾位ニ望ム

〔読み〕すずめのみや を すぐ るや こうほう を けんい に のぞ む

〔意味〕雀宮駅を過ぎると日光の山々の峰が北西にみえる。

「雀宮」は、鉄道東北線の雀宮駅のこと。

「乾位」の乾は八卦の一つ。方位としては北西を示す。

〔出典〕『下谷叢話』第三十八章 永井荷風・著 岩波文庫 2001年発行

〔元の出典〕『赴任日録』 鷲津毅堂・著

 

【詳細】

「晃峰」の晃は、元々有る漢字で、「あきらか。かがやく。ひかる。」の意味をもつ。

日本では、日と光の二字を合併して、日光の合字としても用い、日光山を晃山とした。

大漢和辞典「晃」

漢詩は五言七言が主流であり、固有名詞なども二字に収める工夫をしている。

富士山も三文字なので、「富岳ふがく」「富嶽ふがく」「士山しさん」「不二ふじ」「芙蓉ふよう」「蓮岳れんがく」など二文字で表現している。

「芙蓉」「蓮岳」は、富士山の頂上に八つの峰があって八弁の蓮華れんげ(芙蓉とも)に似ていることから。

「士山」は、全国調べても富士山しかない。「不二」は、この世に二つと無いという意味だそうだ。

比叡山は、「叡山」「北嶺」。比良山は「比良」。越後(今の新潟県)と越中(今の富山県)の山々を「越山」。飛騨山脈北西部の連峰を「立山」など。

日光山(男体山なんたいさん二荒山ふたらさんとも呼ぶ)も三文字である。よって、「晃山」を作ったと思われる。

二荒山は、古称。弘法大師が音読みで「にこう」と読み、それを「日光」として今日に至ると『日光山縁起』にある。

 

【雀宮駅から北西に観た山々を地図で確認】

日光山を北西に観る

雀宮駅から北西を遠望すると、男体山(日光山)が真正面に観える。

 

【『赴任日録』は『毅堂丙集 巻三』に残されている】

「毅堂丙集」巻三の一部

元々は漢文で書かれていたものを永井荷風が『下谷叢話』で読み下し文にした。

 

【眉雪の独言】

当初、晃峰は「かがやく峰」の意味だろうと思っていた。結果は「晃」が日光のことで固有名詞だった。

ここまで辿り着くのに、2月頃から調べて、約9ケ月かかった。